旅は、ごちそう。(中川賀代子)

戸田ゼミコラムのアーカイブです。このコラムはすでに連載を終了されています。

2006年11月

私は年とともに、作られた新しい観光スポットよりも
下町とか生活感の感じる街並みを
ぶらぶらとすることが好きになっています。

それでも何も知らない観光客ですので
行ける場所や時間が限られています。
散策コースからはずれてみたり、
地図を片手に迷ったり、進んだり。

そうしながら、車も通れないような細い道をはいってみると
狭いながらにも、玄関先には鉢花が季節を彩っています。
犬が寝転がっていたり、猫がわがもの顔に歩いていたり。

玄関や門飾りだけでも
地域によっていろいろあるものです。
そういうものに気がついた時など、
すごい発見をしたように、ひとりうれしくなったりもしています(笑

特別なものではない、日常。
それをふと垣間みる瞬間、
「あーいい町だなあ」
「住んでみたいなあ」
などと、思ってみたりすることもあります。

しかし、楽しさを味わうだけではなく、
そこに住む人のプライバシーのスペースに
踏み込んでしまわないように、十分注意をしています。

路地裏をつき進んでいくと、敷地の中にはいってしまったりとか
写真を撮ろうとする時、被写体のバックにおうちがはいってしまったりとか
これまでに反省すべき事を経験しました。

幸い、お叱りを受けることはありませんでしたが
生活感を感じるということは
そこに生活する人を見るということなのですね。

観光客としての節度をわきまえて
これからもぶらぶらと
町歩きを楽しみたいと思っています。

最近はすっかり長期よりも短期の旅行で、
車で出掛けることのほうが多くなっています。

それでも町歩きが好きなので
気分が向いた時、
そして運動不足を少しでも補うために
10分でも近所を歩いています。

私の散歩コースには
窯垣の小径という、瀬戸市の観光スポットがあります。

人しか通れない細い坂道に沿って建つ家には
焼き物を焼く際に使用していた
陶製の棚板のようなものや、円柱型のものなどを
塀や門柱、家の基礎の周りなどに再利用しています。

それを窯垣と言うらしいのですが
そこは私のアバウトな知識なので
軽く流してください。

再利用されたものが、並んで作り出す模様が
なんとも私の好みなのです。
夕暮れにこの道を歩き、ゆったりと歩く猫とすれ違ったり、
お庭の花を愛でたり。

そして、ここが好きなところの理由はもうひとつ。

初めてここを訪れた時、
カメラ片手にワクワクしながら歩いていた私に
「どこへ行かれるの?」
と、声をかけてくれたおばあさんがいました。

うちのおじいさんが、観光ボランティアをしているからと
ご自宅の玄関先まで連れていってくれて
「ここの施設は今日は休みだ。この時間ならあそこなら開いているから」
といろいろ教えてくれたのでした。

すれ違うたびに挨拶をしてくれ、
やさしい言葉をかけてくれた人達。
瀬戸の町をいっぺんに好きになってしまい、
瀬戸市に住むきっかけとなった出来事でした。

一日一日と寒さを感じ、紅葉の季節となりました。
この時期になると思い出すのが、
奈良県と三重県との県境にある曾爾高原のススキ。

数年前。
思い立って、暗くならないうちに訪れようと急いで家を出掛けた日。
なだらかな山の斜面一面に
午後の傾きかけた陽の光を浴びて、黄金色に輝くススキの穂。
それはそれはきれいなものでした。

それから毎年秋になると行きたい気持ちはあっても
なかなか時間がとれず、時期を逃していました。
今年はポカッと
突然のプレゼントのように行くことができたのでした。

今回は下調べもせず、カーナビまかせ。
今思うと遠回りを案内されたかもしれないし、
ここは通れないよぉ〜っていうくらいの細い山道は
カーナビに怒ってみたりして(笑

息切れしながら、駐車場から高原入り口の茶店へ。
そこから視界が広がり、思わず声をあげてしまいます。
やっとたどり着いた高原は、以前見た記憶のまま。

正面には沼地があるそうですが、歩いているとススキに隠れて見えません。
なだらかな山の斜面から頂上のほうまで
一面にススキの穂が揺れています。

まだ葉がやや緑がかっておりましたが、
もっと寒くなって葉が枯れると、太陽の陽によっては
一面が黄金色や、銀色にも見えるかもしれません。
風が吹くと、穂が波のようにサワサワと揺れるかもしれませんね。

小さい花でもたくさん集まると非常にきれいなものです。
ススキの原っぱ程度のものは
子供の頃もよく見ておりましたが
高原ともなると壮大です。

曾爾村のホームページを見ますと
春から夏は新緑が美しいとか。
また、あたたかくなったら訪れてみたいと思いました。

自然の美しさは、本当に心をリフレッシュさせてくれます。

ここ2~3年、秋になると訪れる中津川。
そう。目的は「栗きんとん」です。
先月はその栗きんとんを求めて、和菓子店をハシゴしました。

秋になるとデパートの食品売り場にも並ぶ栗きんとん。
お隣の県ならば本場で買わねばと
ふらっと出掛けたのが、秋の恒例になってきました。

実は栗菓子は、
モンブランや栗の甘露煮のあま〜〜い印象があって
食わず嫌いな食べ物でした。
それがいつの間にか
栗きんとんを買い求め、中津川まで行くようになったのです。

今年はちょっと趣向を変えて
2個ずつ4つのお店で購入。
同じ栗きんとんといっても
店によって味が違うだろうと思ったので
生意気にも、栗きんとんの食べ比べを試みたのです。

だいたいのお店が市内で何店舗か構えているので
今回はJR中津川駅の近くの和菓子店を巡りました。

普段は食べ比べることなどありませんので
気がつきませんでしたが
やはり店ごとに甘さや、混ぜる栗の粒の大きさ、
きんとんの絞り方、形などが違います。

添加物や保存料なしで、栗と砂糖だけで作るシンプルなお菓子。
そのひとつひとつを、いまだに手で絞っているそう。
ホクホクッとした食感やほんのりとした甘味を
一口で食べてしまうのは、とても贅沢なものです。

国道19号の幅広いバイパス沿いには
老舗の大きな店がいくつかあります。
あまりの行列で店舗にはいるのもあきらめたところもありました。

想像する以上に、
栗きんとんは、皆が楽しみにしているお菓子でした。

たぶん来年もここを訪れるでしょうね。

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